超能力者だけの世界で。



「合世…色弥…。」


恐怖と驚き混じりの表情の磁波エレキ。
来てくれたことだけでも嬉しい。
彼の知っている俺は極悪非道の悪者、マッドサイエンティスト。
罠かどうかを疑うのは当たり前。


「ちょっと、俺の話を聞いてくれないか?」


今日は自分にも嘘をつくつもりは無い。
能力も使わない。
全てが手遅れになる前に手を打つ。


「話?」

「ああ。今日はソレだけだ。」


本当だ。
こんな奴を信用しろっていうのも無理があるのは承知している。
お願いだ。今だけ。


「分かったよ!分かったから…そんな泣きそうな顔するなよ。」

「え…あ、悪い…。ありがとう。」


エレキは相当焦っていた。
そんな泣きそうな顔してたのか?

まあ、昔から感情が顔に出やすいのは自覚済みだが。
だから、いつもは能力を使って感情の制御をしていた。


「本当にあの合世色弥なのか?」

「そうだが…?」

「変わりすぎだろ。」


困ったような顔で俺を見る。
確かに能力を使っている時とは全く違う。
とりあえず、謝ることしかできない。

そろそろ、本題に入ろう。


「まず、頼みたい事がある。」

「俺に?」


そう、お前にしかできないことがある。
これから起こることに…少しでも多くの人手が必要だ。


「北区に行ってほしい。」

「北区ですか?」

「行ってみれば分かると思うが、《創始者》が改造能力者を多く送り込んだ。」


《創始者》は北区を潰すつもりだ。
闇原と澪原の事を命令された時には分からなかったが。

この町を作り直すために。
区の制圧をしていく。

俺はアイツ等の言うがままにやって来て、多くの人を犠牲にしてきた。

…自分が弱すぎた故の結果だ。
戻ってこないモノが多すぎるよ。


「えっ!!ちょっ…色弥さん?何で泣いてるの!?」

「ご…ごめん…。」