「朝食は食べていかなくていいのか?」
リビングを覗くと、男の人がソファーに座って、笑いながら私を見ていた。
「食べてたら確実に遅刻しちゃいます。それより、あなたは会社…行かなくてもいいんですか?」
私はジーッと冷たい視線を送った。
スーツは着てるけど、まだ出ていく気配もなさそうだし、ゆったりくつろいでる感じにしか見えないんだよね…。
「陽菜を見送ったら俺も出るよ。昨日までは通勤に1時間掛かってたけど、今日からは車で10分ぐらいしか掛からないんだよな…。すごくありがたい。」
「そ、そうなんですか…。」
な、何よ……。
その余裕たっぷりな感じが腹立たしい…。
ムッとしながら玄関へと急ぎ、靴を履いていると、男の人がリビングから出てきた。
「あのさ、陽菜。ちょっといい?」
「は…?」
こっちは急いでるんだから、少しの時間も割いてる場合じゃないのに…とイライラしつつ、男の人の方に視線を向けた。


