「そう言えば、さっき…言おうとしたことなんだけど…」
「さっき?」
「ほら…こっちに何か用事があって来たのか、俺に聞いただろ?あの時、言い掛けたところで会話が終わっちゃったからさ…。」
あっ…
そうだった…!
悠哉さんの咳払いで会話が途切れちゃったんだっけ…。
「う、うん…。それで話の続きって…何?」
瞬きのスピードを速める私に、翔琉くんはニッコリと優しく微笑んだ。
「俺、こっちには…用事があって来たわけじゃないから…。」
「えっ…」
「両親の仕事の関係で、また…こっちに引っ越して来たんだよ…。今日は、その挨拶みたいな感じで陽菜ちゃんに会いに来た…。」
「そ、そうなの…?」
「うん。ずっと…っていうわけじゃないんだけど、しばらくは…この街で生活すると思う。だから、これから宜しくね…!」
翔琉くんは笑顔で私に手を振ると、すっかり暗くなった道をスタスタと足早に歩いて行ってしまった。


