でも…帰る前に、これを飲まなきゃ…だよね。
悠哉さんが飲んだココア…。
だ、ダメだ…。
どうしても、意識しちゃうよ…。
私が飲むのをためらっている間に、悠哉さんはコーヒーを飲み終えてしまった。
「ココア、冷めないうちに飲んだ方がいいぞ?」
ニコッと優しく微笑む悠哉さんに、気持ちはますます焦る一方だ。
どうしようっ!
早く飲まないと帰れないのに、変にドキドキしちゃって口をつけられないよ…。
私は、悠哉さんとココアの間で視線を行き来させる。
「陽菜、飲まないのか?」
すると、そんな私の行動を不思議に思ったのか、悠哉さんから声を掛けられてしまった。
「あっ、えっと……」
言葉を詰まらせると、悠哉さんは不敵な笑みを見せながら、私が手に持っているカップを指差した。
「陽菜…、もしかして意識してる?俺が飲んだこと。」


