Virus ―Another Story―

キィィ……


静かに扉を開ける。


中に動く者は…いないようね。


私は安堵のため息をついて完全に中に入る。


「ふぅ……」


中に誰かまともな人間が居るのを期待したんだけどね…。


一歩踏み出した瞬間だった。


ガチャ…


左上から嫌な音がした。


ゴリッと冷たい何かが当たる。


直感で分かった。


今、私の頭に…銃が突きつけられている。


?「…ふん。こんな所まで入って来たか」


少し低い声。


でも、それはうめき声とは違う。


(! 言葉…?人間!?)


私は慌てて両手をあげて話した。


「ちょっと待って!私は人間よ!」


?「……人間?」


暫く沈黙が続いたが、やがて頭から銃がどけられた。

良かった……。


私はそっちを見る。


すると、多分私と同じくらいの年齢の…黒に近い茶髪の目付きのきつい少年が居た。


?「命拾いしたな。…まぁ、この状況だったら頭を撃ち抜かれる方が幸せかもしれんがな」


それだけ言うと彼は部屋を去ろうとした。


私はまた慌てて声をかける。


「ちょっ、ちょっと待ってよ!一体、何が起きてるの!?」


?「俺が知るか」


うっ、即答……。


でも、やっと見つけたまともな人だ。


こんな事で失うわけには行かない。


私は負けじと話を続ける。


「知るかって……。それより、貴方は?あっ、私はイル。イル・エンゼル」


私はそう言うと少し微笑んだ。


だが、彼の顔には笑顔の欠片もない。