蜃気楼

呉壽は神妙な顔で、身体を乗り出してきた。



「王は何も知らない。
黒幕は、違う人間だ。」


「ふざけてるな。」


「確認するって、言ってくれた。」


「本当か?
お前を疑って、話半分に聞いてたんじゃないだろうな?」


「信じてくれた。
と思う。」


「思うってお前!」



叫ばんばかりの呉壽を押さえつけ、多々良が叫んだ。



「人の頭の中を覗けるわけじゃないんだ、客観的に判断するしかないだろ!」


「悪い…。」


「取り敢えず、話は聞いてもらえた。
あとは、向こうが確認するのを待つだけだ。」



多々良が手を組んでソファに深く腰を下ろすと、呉壽も大人しくそれに倣った。



「…捕まった連中は?
会えたのか?」


「まだ。
それも王のコンタクト待ち。」


「待つのは長い…。」


「そうだね。」



チッチッと、見たこともない高価な時計が無情に時を刻む。



コンコンと、ドアがノックされた。



はっと呉壽は山賊らしい身のこなしで立ち上がる。



無声音で隠れてと指示し、多々良はドアに向かった。



「はい?」



警戒して、身体は半歩捻ったままだ。