蜃気楼

「なんだか夜なのに、昼間みてぇに明るいしよぉ。
なんだ、ここは。」



興味津々に頭上の明かりや、ふかふかのベッド、ソファなど、手当たり次第に触りたくる。



そして一通り遊んでみたのち、ぽつりとつぶやいた。



「都楼や架妥にも見せたかったなぁ。」



呉壽は背中を向けているので、表情はわからない。



声はとてもさみしそうだった。



「で、どうだった。」



唐突に、呉壽は振り返る。



その顔は厳しかった。



「うん、まぁまぁかな。
王とは話せたよ。」


「どんな奴だった。」



殺意をみなぎらせ、顔は獣のように猛っている。



多々良は呉壽を落ち着かせようと、ソファに押し込んだ。



「落ち着いて聞いてよ、一応いい報せなんだから。」


「ほう?」


「思っていたよりも、いい人だった。
最初はなんだこいつと思ったけど、話をちゃんと聞いてくれるし。
…あの人、状況を理解してないみたいだった。」



呉壽はぎろりと多々良を睨んだ。



「どうも話が食い違ってたみたい。
あの人は、この戦争は反乱で生じたものだと思ってるみたい。」


「馬鹿言え、あいつらが俺達を皆殺しにせん勢いで…!」


「だからさ、話が行き違ってるんだってば。
報告が上がってないんだよ、王まで。」


「…というと?」