蜃気楼

「大丈夫ですか?」



すっかり存在を忘れていた召使の手を借り、多々良は案内された部屋に入った。



「あのぅ、捕虜の人たちがいるところ、どこかわかりますか?」



召使は思いっきり怪訝な顔をする。



「ほら、今起きている戦争の。
牢?みたいなところに連れて行ってもらえれば…。」



召使はちょっと考えたようだったが、丁寧に頭を下げた。



「申し訳ありません。
そういったことは王の許可が確認できませんと、無闇に私どもで判断できるものではありませんので。
ひとまず、ここでゆっくりとおくつろぎください。」



あぁ、そうだよね。



静々と下がっていく彼を見送りながら、多々良はふうっとため息をついた。



まぁ、一番大事なことは伝えたし。



取り敢えず、目標一つ達成!



「あ゛~!」



ぼふっとベッドに倒れこむ。



疲れた。



野宿のせいで、身体も疲れている。



旅程を思い出した多々良は、はっと一緒に旅してきた人物も思い出した。



急いで、窓を開ける。



「呉壽!」



小声で呼んでみる。



かさりと、下の方で何かが動いた。