蜃気楼

この人に、颪のことを言ってもいいのだろうか。



でもいずれ、言うことになるだろうし。



でも今言って、みんなに迷惑がかかるようなことになれば…。



ちらりと目の前の王に視線を投げると、彼も一直線にこっちを見返してきた。



迷った末、多々良は口を開いた。



「仲間を救うためです。」


「ほう?」


「戦をやめさせるためです。」


「戦?」



ここで、王は初めて感情を示した。



不思議そうに多々良を見、首を傾げる。



あぁ、この人は知らないんだったか。



「今、起きている戦争で、軍に対抗している義勇軍は僕の仲間だ。」



これ以上、死人を増やしたくはない。



そう呟くと、王は詳細を訊いてきた。



しかし多々良には答えられるだけの知識がない。



戦場にいたわけでもない。



でも、失ったものは答えられる。



「詳しくは知らない。
でも、多くの仲間が死んだ。
帰ってこなかった。」


「そんなに仲間を救いたくば、反乱をやめればいい。
お前達が無意味に軍に攻撃さえしなければ、無意味な殺生はしなくてすむ。」


「……何言ってるの?」