蜃気楼

「しっかし、収穫なしってのは…。」



黄ばんだ爪で、呉壽が坊主頭を掻く。



架妥というらしい少年は、無表情で多々良を拘束している。



「君、誰?」



暇つぶしに訊いてみると、彼は冷たい微笑を浮かべて、言った。



「山賊の次期頭だよ。」


「へぇ、よろしく。」


「…。」



一瞬にして、彼は表情を変えた。



感情を消した瞳で、多々良を見下ろす。



「馬鹿にしているのか。」


「え?」


「殺してやろうか…。」



殺す?



僕を?



どうして?



多々良はじっと彼を見つめた。



呉壽が焦った声を上げる。



「まずいぜ、架妥。
殺しは御法度だろ。」


「関係ない。
侮辱された。」


「駄目だって、都楼に叱られるぞ。」


「奴だって話せばわかる。」



どうやら、架妥の方が立場は上らしい。



身体は大きいものの、呉壽が委縮して見える。