長い間、何もない部屋で待たされ、多々良は猛烈な眠気と戦っていた。
今まで触ったこともないくらいのふかふかな絨毯。
消えることなく燃え盛る、暖炉の火。
見たことのない、たくさんの灯り。
物珍しいものに囲まれているにもかかわらず、睡魔は襲ってくるのだった。
「多々良様。」
突然名を呼ばれ、多々良は飛び起きた。
「お待たせいたしました。
国王様がお会いになるそうです。」
はぁ、と情けない声を出してしまった。
案外、簡単に会えるものなんだな国王って。
どこまで続くのかと目を見張るくらいの廊下を進み、一際装飾の施された一室に案内される。
感嘆してきょろきょろと見回していると、威圧的な声が響いた。
「お前が多々良か?」
びくりと身を竦ませ、多々良は声の主に注意を移す。
凝った装飾の玉座に座った王らしき人物とその隣に座る王妃が見えた。
「はい。」
こいつが、王。
国を牛耳る、王。
颪をひどい目に合わせた、王。


