あー、もうなんか…。



城って感じだね…。



多々良はぽっかーんとそびえたつ城を見上げた。



隣の呉壽は、不機嫌そうだ。



「ったく、こんなに豪華にする必要があんのかよ。」


「それは僕も同意見。
…孤児院を見せてやりたいね。」



まったく、僕がこの家の生まれだなんて、笑っちゃう。



呉壽は禿げ頭を掻きながら、多々良を見下ろした。



「お前、本当に記憶にないのか?」


「ないよ。
大体、王妃が僕を捨てたのは赤ちゃんの頃なんだろ?
そんなの記憶喪失になってなくったって、覚えてないよ。」


「そうか、そうだな。」



馬鹿なことを訊いたと呉壽は気まずそうだ。



「…じゃ、行くね。」



多々良は深呼吸して言った。



みんなの運命を背負ってかなきゃ、と思うと足が竦んだ。



呉壽は何も言わない。



最後に、前にしてくれたみたいに力強く肩を掴んでくれた。



あぁ、もう。



城に入る前から泣きそうだ。



きっと、もうみんなには会えない。



覚悟してきたはずなのに、やっぱり寂しい。