蜃気楼

武器は、自分が王妃の隠し子だったってことくらいだ。



聞くところによると王妃には子供がいなくて、世継ぎ探しのために多々良のことをしゃべったらしい。



あとを継ぐと言えば、なんとかなるんだろうか。



でも王のほうは僕をよく思わないだろうな。



「呉壽、城の内部のこと、知ってる?」


「知らない。
俺が知るわけないだろう。」


「じゃあ、捕虜って、何人くらいいると思う?」


「俺なら、指揮官あたりを残してあとは始末するね。」


「じゃあ、ざっと数十人か…。
それだけなら目立たずに脱走できる?」


「馬鹿か。
兵隊がうじゃうじゃいるんだぞ。」


「んー。
じゃあ、失敗したときのことなんか考えなきゃだね。」



そうこぼすと、呉壽が冷やかな目で見てきた。



「…なんだよ。」


「お前、失敗なんか考えるなよ縁起が悪い。」


「最悪のシチュエーションも考えないと。」


「架妥が言ってた。
なるようになるって。」


「……あぁ、言いそう。」



でも確かに、なるようになるよ。



…って、単純に情報がないから作戦立てれないだけだけど。