蜃気楼

なるほどね。



…架妥のためじゃなかったら、遅いのかな。



「城までの道は呉壽が知ってる。
そこまではついて行け。
その先は…わかるな。」



いや今まで城すら見たことないんだけど、と言いたいところをなんとか我慢して多々良は頷いた。



まったく、都楼は。



どうやら旅は徒歩らしく、呉壽はさっさと出発してしまった。



多々良は慌てて後を追う。



ちらりと後ろを振り返ると、興味のないふりをしていた仲間たちがじっと多々良を見つめていた。



多々良を慕ってくれていた子ども達が、親の背中から怖々と顔を覗かせている。



多々良は小さく手を振って、前に向き直った。



「呉壽、ありがとう。」


「お前のためじゃない、仲間のためだ。
…俺がお前を許しただなんて、思うなよ。」



…許す、か。



僕は僕に責任のないことまで背負うのか。



苦しんできたのは、僕も同じなのに。



はぁ、とため息が出た。



上手く外に出られたのはいいが、これからさきどうしよう。



まったくのノープランだ。



説得するったって、材料がないし…。