蜃気楼

「信じてもわらなくったっていい。
賭けてみて。」


「お前に?
王家の坊ちゃんにか?」


「知ってるだろ、僕は親の顔を覚えていない。
僕の親は院長様だけだ。」


「知るか。」


「呉壽、架妥を助けたくないの?」



呉壽は声を荒げた。



「助けたい?
もう、無理だってわかってるんだろお前も。
架妥は戻ってこなかった。
戦場のどっかで、もう…。」



最後は涙声になった。



「綺麗ごと抜かすんじゃねぇよ…。」



綺麗ごと、か。



確かに、確率的には、もう架妥は死んでいる可能性が高い。



でも、捕虜になっているかもしれない。



頭的存在の架妥は、恰好の人質になる。



「行かせて、呉壽。
逃げない。
誓う。」


「お前の誓いなんか…。」


「じゃあ、城までついてきたらいい。
逃げそうになれば、殺せばいい!」



行きたいんだ。



架妥が生きている可能性に賭けてみたいんだ。



なんとかしたいんだよ!