多々良は暗い牢の中で、考えた。
自分がするべきことはなんなのか、四六時中考えた。
そして、思い立ったことは…
脱走。
ここから出て、城へ向かう。
そして、戦いをやめるように乞う。
母は息子に弱いと聞く。
頼み込めば、なんとかなるかもしれない。
だから…
「呉壽。」
多々良は見張りに立っている呉壽に呼びかけた。
あの日から、呉壽は一度も多々良に返事を返さなかった。
「呉壽、聞いて。」
それでもめげずに話しかける。
「僕をここから出して。」
声は発さなかったが、呆れたような様子が見て取れた。
「逃げるんじゃない、交渉しに行くんだ。
頼む、架妥を助けたいんだ。」
「俺が、お前を信じられると思うか?」
よし、やった!
話してくれさえすれば、いい。