蜃気楼

それでも、いいや。



都楼がそれで少しでも救われるのなら、それでもいいように思う。



きっと、それでは解決しないけど。



それでも、都楼は今なんとか行動を起こさなければ、自分の中の正義を貫かなければどうにかなってしまうんだ。



多々良はどこからか出てきた紐で両手を縛られ、牢に引っ立てられた。



すれ違いざま、都楼の悲痛な叫びを聞いた。



「俺も、架妥も、お前を信用してたのに…。」



初めて、都楼の弱々しい声を聴いた。



呉壽でさえも、足を止めるほどに。



絞り出すような声に涙がこぼれた。



どうして、こうなったんだろう。



こんなことなら、最初から王家の者だと知られて突き出されたほうがましだったし、最後まで知られなかったならもっと良かった。



どうしてかな。



せっかく居場所を見つけたと思ったら、今度はその居場所そのものを壊してしまうなんて。



僕は疫病神だ。



周りを不幸にするのは得意なのに、どうして役には立てないんだろう。



住み慣れた牢に入れられ、多々良は嗚咽を漏らした。



「呉壽。」



去ろうとしていた呉壽は足を止めた。



「本当に、知らなかったんだ。
凬は、僕にとっても大切だったんだ。
これだけは信じて…。」



返事はなかった。