蜃気楼

そんな多々良に容赦なく、都楼は言い放った。



「とっ捕まえろ。」



男たちは従順に都楼の言葉に従う。



呉壽までもが従った。



「待って!」



そんな言葉も、当然聞き入れられない。



多々良は必死でもがいた。



「待って、都楼!
僕は何も知らないんだ!」


「だから?」



都楼は腕を組んで冷やかに傍観している。



「だから、何?
俺から架妥を奪ったことへの言い訳になるの?」



多々良は目を見開いたまま固まった。



あぁ、都楼。



寂しんだね。



苦しんだね。



何かに当たらなければ、壊れてしまいそうなんだね。



多々良は抵抗をやめた。



都楼が震えていたのが、見えたからだ。



いつもの高圧的な瞳の奥に、悲嘆に暮れた都楼が見えた。



僕はこれからどうなるんだろう。



やっぱ、殺されるのかな。