蜃気楼

「それでも、正真正銘の王子だ。」


「確かなのか?」



呉壽が鎮痛な面持ちで訊く。



都楼は冷たい声で言った。



「俺を信じられないのか、呉壽。
この俺が、潜入して調べたんだ。
最新の家系図に、こいつの名前が載っていた。
……王妃の隠し子だ。」


「隠し子!?」



仲間たちは目を剥いて多々良に視線を集中させる。



が、誰よりも驚いているのは、多々良自身だ。



「ちょ…っと、待って。
僕が、王家の人間?」


「あぁ。
年齢も一致。
最近発覚して、今奴らは躍起になってお前を探してる。」


「僕が、王子…。」



そんなの、信じられない。



でも、隠し子ならあり得るか。



育てられないから、孤児院に?



いや、それはなんでもひどい。



自分で生んだ子どもなら、知り合いの貴族とかに預けるだろうし。



でも、そうもしていられない状況だったなら?



あああぁぁぁっ、もう!



多々良は頭を掻きむしった。



なにがなんだか、わからない。



理解、出来ない。