蜃気楼

呉壽の顔が凍りつく。



まさか…。



「呉壽、答えてくれ。
架妥は…?」


「帰ってこなかった。」



聞き間違いだと信じたかった。



帰って、こなかった。



嘘だ、そんなの。



架妥が、帰ってこないなんて嘘だ。



きっと道に迷ったとかで、遅れただけ。



数日差で、帰って来るさ。



「すまん。」


「なんで、呉壽が謝るんだよ。」



答えなかった。



哀しい目で多々良を見つめる。



たまらなくなって、多々良は踵を返した。



「都楼!」



いつものように、木の上で立ち尽くしていた都楼に叫ぶ。



「架妥は!?」



わいわい騒いでいた仲間たちがしんと静まり返る。



都楼はゆっくりと、多々良に目を移した。



ぞくりとした。