蜃気楼

多々良は急き立てられるままに立ち上がった。



足に力が入らず、よろよろと数歩後退する。



するとまた動くなと叱られた。



「ごめんね、重いんだ。」


「知るか。」


「おい、こいつ一人か。」



どこからか、もう一つ声がした。



あれ?と多々良が首を傾げていると、すぐ後ろでまた声がする。



「大荷物だな、収穫ありか?」


「さぁ。」



目の前の少年から視線を外し、振り返る。



「いつのまに。」



坊主頭の大男が、顎を掻きながら多々良を舐めるように見ていた。



「ふむ。
まあ、いい。
さっさと巻き上げろ。」



巻き上げる?



はて、と首を傾げると、いきなり視界が反転した。



わけがわからぬまま顔をしたたか打ち付ける。



目の前には少年の顔があった。



「いてて。」


「喧しい、動くな。」



面倒くさそうに少年は言い、多々良の身体を探る。



「君、何してるの?」


「俺達山賊。
まだ自分の状況がわかってねぇのかお粗末様。」



馬鹿にしたように男は言い、乱暴に多々良を扱う。