蜃気楼

暗闇の中で、都楼の目が光る。



「これは、叩けば叩くほど埃が出てきそうなヤマだな。」



架妥はゆっくりと都楼の顔を見た。



舌なめずりしそうな、顔。



いつもの寝惚けた顔とは比較にならない。



「本気になったのか?」


「あぁ。
久々の大仕事だ。
気張れよ、架妥。」



あぁ、この横顔は、桂月にそっくりだ。



顔つきは都楼の方が断然繊細なくせに、この顔は全く同じ。



親子だなぁ。



「俺が見張りするから、寝ておきな。」



くるりといつもの都楼に表情を戻し、言った。



架妥は頑なに拒否した。



「どう考えても、都楼のほうが疲れてるだろ。
あたしならまだ大丈夫だから、寝てろ。」


「命令だぞ、架妥。」


「嫌だ。
だいたい、頭が倒れなんかしたらどうする気だ。
お前がいないとダメなんだから、自分の貴重価値をわかってくれよな。」



さんざん渋った都楼だったが、結局架妥と疲労に負け、おとなしく眠りについた。



安らかな寝息を立て始めた都楼の髪を梳きながら、架妥はその寝顔を見つめた。



都楼、愛してる。



神様、都楼を帰してくれて、ありがとう。