蜃気楼








架妥はどんどんと山道を歩いていく。



多々良は額に浮いた玉のような汗を拭いながら、あとに続いた。



「ねぇ!」


「なんだ?」


「君、医学知識あるの?
薬草のこと知ってるんだよね。」


「……親父が教えてくれた。
あたしはよく知らないけど、草はみわけられる。」



そっか。



と、架妥は立ち止った。



「これ。」



架妥の指さす方向を見ると、渦巻き状の草がある。



「疲れをとるらしい。
昔、教わった。」


「へぇ。」



多々良はすぐさまその横にしゃがみこみ、いろいろな方向から観察する。



また何かのときに使えるかも。



特徴を頭に叩き込んだ多々良はしばらくして立ち上がった。



「次行くぞ。」



架妥はたったか先に進む。



山奥にどんどん分け入りながら、架妥は薬草を説明していく。



「こんなによく覚えきれるね。」


「覚えないと、仲間が死ぬ。」