蜃気楼








がたがたと家が揺れたかと思うと、揺れが収まった次の瞬間に多々良が顔を覗かせた。



「起きて、朝食の時間だよ!」



架妥は唸って、思い切り毛布をかぶる。



「もう、ふて寝?
登って来るの、苦労したんだから、起きてよ。」



どうして木の上に家なんか建てるかな、と不満そうな声。



架妥はうるさいと怒鳴ってやりたかった。



だいたい、今何時だ。



まだ早いはずだ。



鳥のさえずりが張っている。



「とにかく、いっぺんには食べられないんだから、早く来て。」



いつの間にかみんなのお母さんポジションに陣取った多々良は、忙しそうに降りていく。



目を擦りながら隣を見ると、既に都楼は起きだしたあとだった。



仕方なく、起き上がる。



大きく伸びをすると、手が天井にぶち当たった。



小さな木の家から出、一気に飛び降りる。



のろのろと梯子で降りていたらしい多々良はわっと尻餅をついた。



「あのさ、上から降って来るのやめてくれない?
梯子があるんだから危ない真似しないでよ。」


「うるさい、お前と違ってドジは踏まない。」