蜃気楼

ゆっくりと膝がしらに顔を埋める。



どうして。



どうしていつも冷たいくせに、こんな時に限って優しくするかなぁ。



感傷的な気分のせいなのか、涙がせり上がってくる。



まったく、ずるい子だな。



僕を泣かせるなんて、大した…。



「…また、連れてきてやる。」



お前が望んだときは、いつでも。



そう言った架妥の声は平坦ながらもあたたかくて、多々良はくっと喉を詰まらせた。