蜃気楼

「…どうして、僕をここへ連れてきてくれたの?」


「どうしてだろうな…。
なんか、自然と足が向いたんだ。」


「そっか。
ありがとう。」



返事はなかった。



ちらりと盗み見るとやっぱり頬を赤らめている。



あぁ、架妥って、礼を言われるのが苦手なんだ。



ちらりとそんなことを思った。



「紅葉の季節は、綺麗なんだろうなぁ…。」



長い沈黙ののち、多々良は無意識にそう呟いた。



頬杖をついて、紅く染まった山々を想像してみる。



どうやらまた寂しげな顔をしていたらしい。



架妥を振り返ると心配そうな目が自分を見つめていた。



慌てて微笑む。



「また、連れてきてね。」


「…帰りたいか?」


「え?」



架妥はまっすぐに多々良を見つめている。



「元の場所に帰りたいか?」



多々良は一瞬、答えに詰まった。



さあっと涼しい風が吹き抜ける。



ややあって、多々良は口を開いた。