蜃気楼

すっぱりと切り捨て、架妥は早足に歩く。



多々良は足元が悪いなか、頑張って足を動かした。



徐々に傾斜がきつくなってくる。



どこまで上るんだろう。



さすがに息切れしてきた多々良は額の汗を拭った。



しかし、前を行く架妥は疲れた様子を見せない。



やっぱり、架妥はすごい。



女の子なのにな。



なんだか負けた気持ちになって、悔しかった。



実際は比べるまでもないのだが。



「あともう少しだ。」



見兼ねた架妥は、ぶっきら棒に多々良を励ます。



せめて多々良は笑みを浮かべた。



「苦行の先は、オアシスかな。」


「まぁ、そんなところだ。」



ふっと笑った架妥の横顔は、柔らかかった。



うわぁ、こんな風に笑うんだ。



一瞬、見とれてしまう。



多々良の前では笑顔すら滅多に見せないので、こんな顔はレアだ。



それが励みになり、いくらか足が軽くなった。