蜃気楼

多々良はじっと架妥を見つめた。



「君は、僕を認めるの?」


「都楼がお前を認めた。
だからあたしも認める。」



なにそれ、と多々良は吹き出す。



可笑しいか?と架妥と都楼は顔を見合わせた。



「いや、可笑しかないけどさ。
面白いなあと思って。」


「結局馬鹿にしてるのか!」



激昂した架妥に慌てて降参しながら、多々良は涙を拭って言った。



「うん、いいよ、僕、“颪”に入る。」



腕組みをしていた都楼は満足げに頷いた。



「じゃあ、これからよろしくだな、多々良。」



呉壽はさっそく寄っていって握手を交わしている。



呉壽につられるように、他の仲間もちらほらと後に続いた。



「よかったの?」


「ん、何が?」



隣に立った都楼を振り返らずに、架妥は問うた。



「仲間にして。
あいつを人質にして王族脅迫するっていうプランはどうなったの?」



都楼はさらりと恐ろしいことを言ってのけた。



「その時が来たら、人質にすればいい。」


「……まったく、あんたは冷血だね。」


「え、こんなにあったかいよ。」