蜃気楼

「いや、これは、怪我が…。」



ごにょごにょと言い訳している間にも、呉壽はしきりに感嘆の声を上げている。



「ほぉ、あいつなかなか達者だな。」


「え?」


「手つきがいい。」



いつもなら真っ先に始末をするであろう都楼も傍観している。



無表情だが、架妥にはわかる。



…都楼、関心してる。



思った通り、都楼は立ち上がった多々良を捕まえていった。



「お前、医者か?」


「いや?
ちょっと習いはしたけど。」


「出来るの?」


「う~ん、まぁ、少し。」


「ふーん。」



あ、見てわかる。



都楼、さてはお前…。



「多々良。」


「ん?」


「お前、颪に入れ。」



そら来た。



他の連中は驚いているが、呉壽と架妥はそれぞれ顔を見合わせた。



架妥はほらねの顔。



呉壽はあららの顔。