子ども扱いにむっとしたが、呉壽の背中に殴りかかろうにも体力を消耗しすぎていた。



架妥は仕方なく立ち上がり、あの減らず口の捕虜に食事を届けに行くことにした。



もう問答無用で日課になっている。



今日も籠を投げ落としてやると、飽きることなく不満が届いた。



喧しいと怒鳴ると、多々良はひょっこりと立ち上がって、架妥の目を覗いた。



「あれ?
今日はなんか機嫌悪いね。」


「…あ?」


「ほら、やっぱり。」



へらっと笑う。



何故こいつの笑顔はこうも脱力させる?



架妥はぷいっと顔を背けた。



「ねぇ。
そろそろ僕、ここから出たいんだけど。」


「駄目だ。
お前、自分の立場をわきまえろと…。」



何度目かになる台詞を吐こうとした瞬間、誰かの叫び声が耳に届いた。



敵かと身構える。



獄中の多々良も身を強張らせた。



しかし、原因は子どもらしい。



「火傷かぁ。」



聞こえてきた単語に多々良は反応する。



「悪ガキが悪戯したらしい。」


「手当、しないと。」


「水につければ平気だろ。」


「駄目だよ、跡がのこるだろ。」