前に、都楼に真顔で言われた。



「呉壽のほうがいい嫁になるな。」と。



嫌味でもなく、素でそう口にされてはたまらない。



言った本人はけろりと忘れているようだが、架妥の心には棘として刺さったままだ。



料理以外でなら、刃物扱いは得意なのに…。



どうしてこうも、家庭的とはかけ離れた人間になってしまったんだろう。



架妥は憎々しげに呉壽を睨んだ。



よりによって、見かけがこんな奴に負けるとは。



「どうした、架妥。
顔が怖いぞ?」



お姉ちゃん怖いなぁ、と小さな子供を腕に抱いてあやしている。



どれだけ手元のナイフを投げてやろうかと思った。



「お前のせいだ!」



ぶすっと言い放ち、自分の定位置に座る。



既に席についていた都楼がまたもや眠たげな声で問うてきた。



「なに、機嫌悪い?」


「お前のせいだ!」


「さっき、つい今さっき、他の人間に言ってるのを聞いてるんだけど?」



どういうこと?と問われても。



余計に架妥は引っ込みがつかなくなった。



唸って都楼に飛び掛かる。



途端に都楼は嬉々として両手を伸ばした。



そしてそのまま架妥めがけて腕を振り下ろす。