それでも疲れた顔一つ見せずに働く院長を見てきた多々良は毎日胸を痛めていた。



頼むから、休んで。



そう懇願しても、彼は優しく笑みを浮かべるだけで、頑として聞き入れようとはしなかった。



もう大きくなった多々良達をも院に置き、面倒を見ようとする院長。



見ているこちらが耐えられなかった。



「俺達が大きくなったら、院長を楽にしてやるんだ。」



そう決意のこもった目をしていた兄貴分は、この間の戦に志願して、とうとう帰っては来なかった。



残ったのは、彼が寄付していった礼金だけ。



売れる持ち物はすべて処分していった彼の遺品は、もう何も残っていない。



「お前たちは、何があろうと生き抜いておくれ。
せっかくもらった命だ。」



初めて涙を見せた院長は、多々良の肩を痛いくらいにつかんでそう言った。



…でもね。



でも、それじゃ貴方が生きられない。



彼が資産をすべて使い尽くすのはもう時間の問題で。



捨てられる子どもは日に日に増えていく。



だから。



多々良と仲間は院を出た。



金を稼ぐために。



食い扶ちを、減らすために。



愛している。



感謝している。



だから、貴方には楽になってほしい。