蜃気楼








なんなんだ奴は。



自分の置かれている状況がわかっているのか?



捕虜だぞ。



お前の命はあたし達が握っているに等しいんだぞ。



なのになんだあの態度。



明らかに馬鹿にしている。



舐めている。



…腹立つ。



架妥は力任せに斧を振り下ろした。



「おおい、架妥、こえぇよ!」



仲間の一人が驚いて身体を避ける。



知ったことかと架妥はもう一度斧を振りかぶった。



「ねぇ、何怒ってんの?」



上から、都楼の声が振ってきた。



ぎょっとして、その恰好のまま硬直する。



都楼が気の上から架妥を見下ろしていた。



「意欲的に働くのはいいけどさ、あんまり手下怖がらせるんじゃないよ。」


「うん。」


「わかった?」