蜃気楼

わいわいとみんなで手分けして2人を担ぎ上げ、女たちが待っている場所へ戻る。



冷静さを取り戻した女たちは、驚くほど俊敏に働いた。



そこはさすがだ、と舌を巻く。



大丈夫か、と狼狽える男たちを邪魔だと一蹴し、2人を引き取る。



男たちはただ彼女らの動きを目で追った。



都楼はだいぶ体力を回復したらしく、毛布に包まって架妥の隣に座っている。



心配そうに架妥を見守っていたが、時折鋭い視線を辺りに走らせていた。



さすが、頭。



こんな状況下でも、敵を真っ先に察知するのは都楼だろう。



と、強張っていた女たちの背中から緊張がとれた。



都楼も表情を柔らかくする。



架妥…?



「もう大丈夫だよ。」



年配の女が、安心した声色で告げた。



一気に男たちがへたり込む。



多々良も同じだった。



隣では、イメージにそぐわず、呉壽が泣いている。



多々良が背中をさすってやると、「よがっだぁ」と情けない泣き声を漏らした。



多々良も泣きたい気分だった。



彼女と一緒にいた時間はごく短いが、彼女がいなくなると思うと苦しかった。



助かって、本当によかった。



…自分を監禁している山賊の命を心配するなんてどうかしているかもしれないが。