蜃気楼

ふるふると怯えた顔で捕虜は首を振る。



「どこへやった?」



それでも都楼は問い詰める。



…知らないのはわかってるはずなのに。



「架妥を、どうした?」



やめろ、と呉壽が小さな声でつぶやく。



都楼はまた、拳を振り上げた。



「やめろ!」



呉壽が腹の底から叩き出したかのような声で叫んだ。



「他にも帰ってこない奴らはいるんだ、架妥だけ特別扱いするな。」



しくしくと泣いている男たちを一瞥し、都楼は呉壽に向き直った。



どさりと捕虜を手放す。



「誰に向かって口きいてるんだ?」


「都楼…。」



呉壽が怯えたように後退る。



「答えろ、呉壽。」


「もう、いいでしょ。」



多々良はたまらずに間に割って入った。



あ、やば。



入ってから思った。



余所者の自分なんかが口出したら…、



「退け。」



都楼は怒る。