蜃気楼








架妥はひた走った。



木々の間を縫うように走り、追っ手を巻こうと試みる。



が、敵もそんな手には引っかかってくれそうになかった。



敵が誰なのか、わからない。



ただ、颪を潰そうと躍起になっている連中なのはわかった。



アジトは全壊。



仲間は散り散りになった。



都楼はどこだろう。



無事だといいけど…。



架妥ははっとして立ち止った。



崖だ。



…逃げ道は、ない。



足音が迫ってくる。



架妥は落ち着きなく辺りに視線を走らせた。



何人だ?



5人までならなんとかなるかもしれない。



…でも、男相手はさすがにきついな。



くそっ、と悪態をつく。



ザザッと足音がして、とうとう敵に囲まれた。