蜃気楼

架妥…!



架妥をみつけた。



手に弓矢を持って、すごい勢いで射ている。



額には青筋が浮き上がっていた。



「都楼!」



呉壽が立ち止って叫んだ。



前を見ると、都楼がこっちにやってくるところだった。



「どうする。」



かなり焦った様子で、呉壽が言う。



都楼は汗を拭って答えた。



「ここはもう無理だ。
…アジトを捨てる。」


「せっかく住み慣れたのに…。」



残念そうに、呉壽は辺りを見渡す。



「避難所にみんなを誘導しろ。
絶対に見つかるな、何組かに分かれて行動しろ。」


「わかった。」



泣きそうな声で、呉壽は頷き、物陰に避難していた仲間に呼びかけた。



都楼は入れ違いに走っていく。



火の矢が降ってくる。



「都楼、危ない!」



多々良は思わず叫んだ。