多々良がしっかりつかまったのを確認すると、呉壽は一気にロープを引っ張り上げた。



力強い腕に感嘆する。



「敵が押し寄せてきた。」


「敵?」


「ああ。」



多々良の襟首を引っ掴んで引っ張り上げながら、呉壽は答えた。



「『颪』をよく思ってない同業者はたくさんいるんだよ。」



地上は大変なことになっていた。



テントは燃え盛り、倒れている人間がたくさんいる。



「行くぞ!」



呉壽に腕を掴まれ、多々良は足を動かした。



敵が走りこんでくる。



手に手に、刃物、弓。



多々良は呆気にとられてその光景をみていた。



嘘みたいだ。



こんな、殺し合いをどうして…?



「走れ馬鹿め!」



忌々しげに多々良を小突き、呉壽は多々良を肩に担ぎ上げた。



この前のように視界が反転する。