多々良は暗い地下牢で目を覚ました。



動くと床に落ちている葉っぱがかさりと音を立てる。



んー、と伸びをして、立ち上がった。



地面を掘って作られた、落とし穴に近いこの牢は壁が土なためひんやりと涼しい。



春の朝方は、少し寒さが勝る。



「おーい。」



がやがやとしている地上に向かって、多々良は声を張り上げた。



「おはよー。」



ここに放り込まれて、ほどなく1週間になる。



毎朝、こうして多々良は目が覚めると、朝食を要求するのだった。



そして、その役目は架妥。



今日も架妥は無表情で食事を乗せた籠を落下させた。



…どうやら男と間違えていたことをまだ怒っているらしい。



一度として、普通に籠を下したことはなかった。



「ねぇ、架妥。」



無視。



「ありがとう。」



架妥は聞こえているのか聞こえていないのか、なんの反応も見せなかった。