蜃気楼

「架妥、こっち来い。」


「なんで。」


「いいから。」



え、え?と多々良は混乱して、都楼と架妥を交互に見る。



「こいつは女だ。」


「いいよ、都楼。
どーせあたしは男みたいな奴だよ。」


「あたし!?」



多々良は遠慮なく奇声を発して架妥を凝視する。



…別に気にしているわけでもないが、なーんか腹立つ。



架妥は一発、多々良の頬に拳をめり込ませた。



かっ、と喉を詰まらせ、多々良は吹っ飛ぶ。



「やっぱ気にしてるじゃん。」


「してない、腹立っただけ。」


「ほらー。」


「してない。」



ぷいっと架妥は、背を向けた。



呉壽が気遣わしげに、隣に並ぶ。



くっそ、覚えてろ。



…スカートはいてんのに。



結局気にしている架妥だった。