蜃気楼

都楼がにやりと笑って、架妥を振り向く。



「俺が奴を殺すとでも思ったか?」


「思った。」


「馬鹿。」



少年のように笑顔を見せ、都楼は架妥の隣に戻ってくる。



「珍しいな、お前が獲物に感情移入するなんて。」


「してない。」


「いいや、してたね。」


「してないったら。」


「おいおい、獲物に痴話喧嘩みせるなよ、こっ恥ずかしい。」



呉壽が見かねて間に割って入った。



他の男達も呆れ顔だ。



「まったく、都楼はクールな男かと思いきや、結構子どもだからな。」


「誰が子どもだ。」



むっとして、都楼が呉壽を睨む。



今、都楼に殺気はないので、呉壽は余裕をかまして無視をした。



架妥はそっと多々良のほうを見る。



目が合い、微笑まれた。



「君が架妥だね。
で、君が呉壽。」



いきなり話しかけられ、呉壽は驚いている。



「そして、君が都楼。」



都楼は無表情だ。