蜃気楼

男__都楼はすたっと危なげなく着地し、多々良の前に立った。



「お前、名乗れ。」


「多々良。」


「聞いたことない。」



都楼が架妥を振り向く。



「家系図は頭に入ってるが、多々良だなんて名前は知らない。」



ひょろりとした腕を組み、都楼は記憶を探る。



知らない、ともう一度つぶやいた。



「そっか。」


「俺達の早とちりか?」



呉壽が顎を掻く。



「でも架妥はそいつが本物だと睨んだんだが。」


「見せてみろ。」



都楼が手を突き出すと、呉壽は乱暴に多々良の首からペンダントを外した。



しゃらり、と都楼はそれを持ち上げ、表面を撫でてみる。



難しい顔で、長い間それを眺めていた。



「…架妥、本物だろう。」



呉壽がにやりと笑った。



「こいつは人質の価値あり、だな。」


「でも、孤児院出身だって。
名前でも変えて、偽ってんのか?」


「本名だよ。」



多々良が不機嫌そうに割って入った。