蜃気楼








藪をかき分けて進むと、次第にがやがやと声が聞こえてきた。



呉壽に担がせた青年が、じっと耳を澄ませて状況を把握しようとしているのがわかる。



架妥は一瞥しながらも、何も言わなかった。



突然、目の前が開けて、大きなドーム状の地形が現れる。



ここが、颪のアジト。



天に張り巡らされたかのような木の枝に、何人もの男たちが座っていた。



「なぁんだ、架妥か。
敵かと思ったぞ。」


「ならさっさと殺せ。
命取りになるよ。」


「相変わらずきっついなぁ。」



彼は呆れたように天を仰いで、幹に寝転がった。



細い枝の上でよくそんな、と思うが、山に生きる山賊ならお手の物。



架妥はくすっと笑って、枝をゆすぶってやった。



「ここは?」



青年が口を開く。



呉壽はどうする、といった顔で架妥を窺った。



「お前を仲間に見せる。」


「見せてどうするの?」


「商品価値があるかどうか、品定める。」


「あ、そう。」



普通の人間なら泣いて許しを乞うのに。