そろりと壁に身を隠すようにして覗き見ると、大きく開かれた扉から兵士が2人、悪態をつきながら走り出てきた。



「ったく、なんだよ、あいつら。
捕虜のくせに、自分の置かれてる立場をわかってないな。」


「まったく、なんで俺達が奴らの世話なんかしなきゃなんないんだよ。」


「王も気まぐれだよな、死刑を取りやめだなんてさ。」



その会話を聞いていた多々良は、肌が粟立つのを感じた。



死刑…。



やっぱり、捕まってる仲間はいた。



もし、僕が来るのが一歩遅ければ、彼らは殺されていた。



足に力が入らず、ずるずると崩れ落ちる。



架妥…。



元気なの?



生きてるの?



多々良は顔を手で覆ったまま、はあっと大きく息を吐き出した。



取り敢えず、みんなは生きてる。



王の尽力に感謝だ。



落ち着きを取り戻した多々良は、ゆっくりと兵士のほうに視線を戻した。



豪奢で大きな扉。



中には、無骨な石階段が続いている。



そしてその奥からは、またもや叫び声が響いてきた。



豪華な扉に釣り合わない地下への階段。