朝、ゴーゴーと地響きのようないびきに起こされた。
頭が覚醒するまで横たわったまま待ち、よく思い出してみると自分は昨日の晩の体制のまま眠りこけたところで記憶が終わっている。
伸びをしながら身体を起こすと、バキボキと嫌な音がした。
「呉壽。」
呼びかけながら見ると、広い広いベッドを占領して、呉壽が寝ている。
「呉壽。」
傍にあったクッションを投げつけると、呉壽は飛び起きて叫んだ。
「誰だ!?」
「僕。
煩い。
使用人が不振に思うから、もうそろそろ起きて。」
「んあー、多々良か。」
多々良の言う意味がわかったのか、頭をボリボリ掻きながら起き上がってくる。
「こんなに気持ちのいい寝床は初めてだ。」
「だろうね。
敵陣だってのに、物凄いリラックス加減だよ。」
「お前が敵じゃないって言ったんだろうが。」
「敵じゃないとは言ってないよ、いい人そうだって言っただけ。」
「同じだろうがよ。」
朝から機嫌が悪いな、と呉壽は弱っている。
別に、機嫌が悪いわけじゃない。
自分との暮らしとの差に辟易してるだけ。
多々良がぼーっとしている間に、呉壽はさっと身支度を整えた。
「じゃあ、俺は行く。
また何かあれば呼べ。」
「ん。」
「頑張れよ。」
そういうと図体のでかさに似合わない軽い身のこなしでひょいっと飛び降りていった。