蜃気楼

多々良は冷静に観察した。



多々良が身体の向きを変えると、チャリ、と音がした。



その金音に、二人が素早く反応する。



さすがは山賊だ。



「なんだ、ペンダントか。」



呉壽はあからさまに興味をなくして顔を背ける。



しかし、架妥は目を細めて言った。



「これは…。
呉壽、とんだ拾い物だ。」


「あん?」


「こいつのかけているペンダント……王家の紋章だ。」


「何ぃ!?」



呉壽が勢いよく多々良の髪を引っ掴んで襟首をつかむ。



「どれどれ。」



多々良はさすがにむっとして呉壽を睨んだ。



しかし彼はペンダントに夢中で、多々良など気にもかけない。



「…これが王家の紋章なのか?」


「少しは常識を学べ。」


「俺は武闘派だ。」


「……。」



架妥は呆れたように顔を背ける。



そしてそのまま多々良に問う。



「お前は、王家の人間か?」


「わからない。
記憶がないんだ。
でも、きっと違う。」


「何故?」


「僕は孤児院で育ったから。」