「ねぇ、さくら?」



お母さんがボソと呟く。




「真剣な話だからよく聞いて」



手を止めてあたしの目を見つめる。



「なに?」




「あのね。さくらは、少し記憶が無くなっちゃったみたいなの」



遠くの方で男の子の笑う声が聞こえる。



「あぁ、やっぱり。そうなんだ」



あたしは、薄々気がついていた。



なんか、所々何かが足りなかった。



でも、気づかない振りをしていた。



「あのね、昨日来てた子達も、さくらの大事な、大事な友達よ。さくらは、大事な記憶がなくなっちゃったんだって。」



なんで、こうなっちゃうんだろ。




なんで。。。



「ねぇ、お母さん。あたしの記憶って戻るの?」



これが一番こわかった。


怖くて怖くて仕方が無かった。



「大丈夫。戻る可能性があるわ。さくら、日記書いていたの覚えてる?」



あたしは、首をよこに振った。


「先生がそれを読めば思い出だすことが増えるって。ハイこれ。家から持ってきたわ。
中は見てないから安心して」



あたしは、受け取った。