「紫苑、ありがとう。あとごめんなさい。たくさん迷惑かけて」 振り向きもしないで紫苑は答える。 「別に。じゃあな」 「紫苑、楽しかったよ」 何度も呼ばれたはずなのに、今だけは特別に感じた。 だから―……。 「ごめん、今だけ」 美羽を抱き締めた。 その瞬間、いろんな思い出が頭をよぎった。 いつのまにか、美羽は紫苑にとって大切な存在になっていたみたいだ。