「美和様、食欲がありませんか?」


「ううん、違うの」


夕ご飯の時間、龍矢がいないからかなかなかお箸が進まない。


そんな私を見て、メイドさんが心配そうな顔を私に向けてきた。


「龍矢、帰ってこないんだって」


「そうでございますね。今日はバレンタインですし」


「せっかく作ったのに」


あのロールケーキは冷蔵庫に入れたまま。


「渡しに行かれますか?」


「渡しに?でも邪魔かもしれないし」


渡しに行きたいけど、まだ仕事忙しいかもしれないし。


邪魔って言われるだけかも。


それでも、龍矢に会いたいし、ロールケーキ食べて欲しい。


バレンタインだもん。


少しくらい、会いに行ってもいいよね。