「…考えた、」
「…言っとっけどな、後付けルールはなしだぞ」
「わかってるよっ!」
憤慨する千往は少し歩く速度をあげた。俺の隣をするりと過ぎ去り、前に躍り出た。
俺がこっそり伺った横顔、頬がきゅっと緩んでいたこと。
甘い、ふんわりとした髪の匂い。
───妙に、ドキドキした。
「ゆんちゃんと付き合ってんの?」だとか言われても、「付き合ってない」と言うけど。
「スエゼン食わぬはなんとか、って言うじゃん」だとか言われても、わけがわかんねーけど。
「俺ならぱぱぱっと頂くね!」だとか言われても、……「千往はお前なんかの手には負えないよ」と俺はこっそり思うんだけど。
俺の隣を歩くのは“ゆんちゃん”じゃなくて、“ちゆき”。
あいつの隣を歩くのは、“ゆうと”じゃなくて、“ありと”。
「───おにごっこ。」
千往の背中がピンと張った。
「ありと、おにごっこにしよう」



